シークレット・オブ・チルドレン〜secret of children〜
著者:shauna


 さて・・・アスロック=ウル=アトールはというと・・・
 一人、子供の書いた幼稚な絵をみながら暗い夜の森をさまよっていた。
 「ったく!ホントにあるのかよ!?こんなの!!」
 画用紙にクレヨンで描かれたそれはある花だった。5枚の花弁を持つ紫色の花で花びら同士が切れにつながっている。でも花がおいしいなんて、とても美味しそうには見えないのだが・・・
 「生えてる場所は山のどっかに運がよければって・・なんてアバウトな・・・」
 魔光石でひたすら真っ暗な森の中を歩きながらアスロックはひたすらに森の中を探していた。
「くっそー・・何で俺がこんな目に・・・」
 というのも、元はと言えば原因は罰ゲームだったのだが・・・

「あ〜・・また負けた!!」
 「アスロック弱すぎ〜」
 「もう何連敗目だよ〜!!」
 すっかり子供に馴染んで楽しんでいた。
 子供は全部で18人程だったのだが、人の話を聞かないアスロックは子供の敏感な話の切り替えにも天然に対処し、意外とすぐに打ち解けることができた。
 いい加減な性格は言いかえれば大らかな性格ということにもなる。
 そのおかげでアスロックは別に子供から呼び捨てにされようが何とも思わず、子供もそんなアスロックは接しやすかったのかもしれない。
 それに、こんな風に楽しい時間は久しぶりだった。
 ここまでの旅は一人きりで東に行けば樹海に迷い込み、西に行けばなぜか3日後に同じ街に戻ってきてしまうという結構過酷な旅路だったのだから。
 それに冬の昼間から暖炉の燃える暖かな部屋でのんびりしているだけでエアブレードをタダで修復してもらえるなど、自分はなんと運がいいのだろう。
 通常の職人に頼んだら下手をすれば10000リーラぐらいとられるかもしれないというのに・・・
 一人の男の子がアスロックに話しかける。
 「なあなあ、アスロック!もう一回やってもし負けたら俺達の言うこと何でも一つ聞いてくれよ。」
「じゃあ、俺が勝ったら・・・まあいいや。とりあえず続きだ!」
アスロックは手元のカードを切って全員に5枚ずつ配る。
そして配り終えると同時に自身の手札をオープンした。
ハートの3、ダイアの4、スペードの6と2、クラブの9・・。
む〜ん・・・見事なまでに揃って無い。
「全部チェンジ!」
おお!今度の手札は!
ハートの4、ハートの9、スペードの3と4、クラブの10
よしワンペア!ここまでで一番の引き!!
「勝負!」
 アスロックが勢いよくワンペアをオープンする。
 「ハハハ!!どうだ!!お前らカードオープンしてみろ!!」
 4人の子供達が一斉にカードをオープンした。
 ハートの2,6,8,7,10
「フラッシュ・・」
クラブの4,6、スペードの7,8、ダイアの5
「ストレート」
ハートのJ,Q、スペードのJ,Q、クラブのQ
「フルハウス!」
そして・・
全てのKとJOKER・・・。
「ファイブ・オブ・ア・カインド」
「そんな馬鹿な!!」
「アスロック・・やっぱ弱すぎ・・・。」
「じゃあ、罰ゲームね。」
 「チッ・・・」
 「罰ゲームはね〜・・・。」

 
 
 ―明日なんだけど実はシルフィリア様誕生日なの。だからお祝いしてあげたいんだけど、ただこのお屋敷の中飾るだけじゃ味気ないでしょ? だからセイミ―さんにも頼んで料理作ってもらおうと思うんだけど、その材料に桔梗って花を使いたいの。シルフィリア様の大好物なんだ!!―


 「それはいいけど・・・朝行くんじゃダメなのかよ。こんな深夜の寒い中・・・モンスターにでも襲われたら対抗できないぞ・・。」
 エアブレードも折れてるし・・・とアスロックはため息をついた。
 大体、花なんて夜なのでどこを見ても黒一色にしか見えない。
 そもそもこんな所でこんな事をしていていいのだろうか?
 自分には火の解読書をスペリオル聖王国に火の解読書を届けに行くという機密の使命があるというのに・・・・
 でも・・・まあ、こんなことしてるのもいいかもしれない。
 なにしろ、ここ一年の間はずっと火の解読書を守る為に気張ってきたわけだし・・・
 たまにはいいか・・・と適当に自己解決した。
 こういう時は深く考えすぎないに限る。
 あいも変わらずアスロックは白く光る魔光石を辺りにかざし、草木をかき分けながらただただ桔梗を探す。
 まあ、あいもかわらず見つからないわけだが・・・
 と・・・・・
 森の向こうに僅かな明かりを見つけた。
 およそ300m程離れた所にホゥっと輝く小さな光。
 アスロックは目を細めて凝らす。
 「あれは・・・・貴族か?」
 白い光はおそらく魔光石であろうが、それにしても数が多い気がする。
 明かりだけ数えても20〜30。
 持って無い人間も入れれば100を遥かに超えるのではないだろうか?
 そう言えば、あの盗賊共が言っていた。
 シルフィリアにスペリオルを作ってもらう為に足蹴く通う貴族が居ると・・・
 「御苦労なことだな・・・」
アスロックはそう呟くと再び桔梗を探す作業に戻る。

いや・・・まてよ・・・・

アスロックの頭に疑問が生じる。

おかしい・・・時刻はもう夜の8時過ぎに迫ろうとしているのだ。
そんな時間に何においても目上の人間には礼節を重んじ、さらにめんどくさがりで通常なら武器屋を家に呼ぶようような貴族がわざわざあれほどの大除隊を率いて尋ねてくるだろうか?

手に持っていた明かりを消して、アスロックはゆっくりと貴族と思われる連中の後をつけることにした。



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